IGES研究員にききました
    第7回 2015年3月
  • Kenji Asakawa

    ショム・ウェイ・チン・ティオ

    IGES北九州アーバンセンター・バンコク地域センター タスクマネージャー; 主任研究員

    専門はアジアの都市における持続可能な低炭素開発。現在、IGESでASEAN ESCモデル都市プログラムを担当。ジャーナリストとして活躍したほか、国連開発計画(UNDP)にてエネルギー・環境問題のコミュニケーション担当官等を歴任。2010年よりIGESにて勤務。京都大学大学院修了。



<関連リンク>IGESを知りたい

第6回環境的に持続可能な都市
ハイレベルセミナー
IGESウェブサイト
オフィシャル ウェブサイト



CAI Newsletter(2015年1月号)
特集:ASEAN ESCモデル都市プログラム
(7.5MB)

「環境的に持続可能な都市」を目指して
- ASEAN ESCモデル都市プログラムの取り組み -

  • 第6回 環境的に持続可能な都市 ハイレベルセミナー

    第6回環境的に持続可能な都市ハイレベルセミナー

経済発展に伴い都市化が進むアジアでは、環境的に持続可能な都市(以下「ESC」)の構築に注目が集まっています。現在、ASEANの約20都市がそれぞれの環境目標達成に向けた活動を行う「ASEAN ESCモデル都市プログラム」(以下「モデル都市プログラム」)が展開されており、2月9日~10日にマレーシア・ジョホールバルで開催された第6回ESCハイレベルセミナー(以下「ハイレベルセミナー」)で進捗が報告されました。IGESは、モデル都市プログラムの実施機関として、さらにハイレベルセミナーの事務局として、これら2つの取り組みに密接に関わっています。
今回は、IGESのショム・ティオ主任研究員に、各都市の具体的な取り組みや都市間連携について聞きました。

---まず、モデル都市プログラムとハイレベルセミナーについて教えて下さい。

ティオ:

モデル都市プログラムとハイレベルセミナーは密接に関係しています。そもそも、ハイレベルセミナーがモデル都市プログラム発足のきっかけとなりました。18ヵ国で構成される東アジア首脳会議環境大臣会合の枠組みの下、日本政府の提案により第1回ESCハイレベルセミナーが2010年に実施され、各国政府、地方自治体、国際機関、援助団体、研究機関、NGO等が参加する中、ESCが地域協力における優先課題のひとつとして承認されました。セミナーの成果としてESCに向けた5つの活動が提言され、IGESがそのうちの「東アジアモデル都市イニシアティブ」を担うことになったのです。IGESはASEAN事務局と共に「ASEAN ESCモデル都市プログラム」を策定し、同プログラムが日・ASEAN統合基金(JAIF)の支援を受けて2011年に発足しました。以降ハイレベルセミナーは毎年開催され、並行して実施されるモデル都市プログラムの成果を直接報告するとともに、ESCに関するネットワークを形成する場となっています。


---モデル都市プログラムでは具体的にどのような活動が行われていますか?

  • Battambang

    日本人の専門家による有機廃棄物管理研修(マレーシア North Kuching市)

ティオ:

モデル都市プログラムの目的は、ASEAN諸国に対して、持続可能な開発を地方レベルで推進するために地方自治体がどのような主導的役割を果たせるかを示す「モデル都市」の構築を支援することです。モデル都市プログラムでは、各国に運営委員会を設置し、ESC枠組み(例:持続可能な都市賞プログラム、指標、ガイドラインなど)や「モデル都市」の国別基準を設定したり、候補都市が提出した提案の評価を行います。最も基準を満たしている都市が「モデル都市」に選ばれ、初期資金、技術支援、プロジェクトの実施と能力開発に必要な支援を受けながら、中央政府やパートナー機関と協力してESCの実現を目指しています。また、モデル都市は都市間ネットワークや支援関係機関の地域ネットワークと連携しながら、ESCの実践例や政策に関する知見を共有し、パートナーシップの構築も行っています。

---ユニークな、そして先進的な取り組みの結果、環境モデル都市として成功を収めた都市はありますか?

ティオ:
  • Climate Change

    学校のすべてのクラスに「ごみ銀行」の預金通帳が普及 (インドネシア マラン市)

  • Climate Change

    Nam Xam川の土手の緑化 (ラオス XAMNEUA市)

このプログラムの大半の都市は、平均以上の能力と熱意を有しているとして、自国の政府から「モデル都市」に選定されています。都市の主要な環境問題(廃棄物、水、大気汚染)に対処するための革新的な取り組みが、特に地域に根ざした分権型の低コストアプローチで行われています。具体的には、医療保険プログラムと連携したインドネシアの「ごみ銀行」、タイの自転車シェアリング、都市の緑化、低炭素都市、ESC地域学習センター、インドネシアとフィリピンの自然廃水処理システムなどが挙げられます。またカンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムなど「より若い」ASEAN諸国の都市は、これらの革新的な取り組みを参考にしています。


---IGES北九州アーバンセンターが位置する北九州市は、環境モデル都市としてアジアの低炭素化や都市間ネットワークに熱心に取り組んでいますが、これら北九州市の活動に対して、IGESとしてどのように関わっているのか教えて下さい。

ティオ:
  • Climate Change

    ASEAN ESCモデル都市事業として行われた「環境エッセイコンテスト」入賞者に対する授賞式(ミャンマー マンダレー市;2015年2月)

  • Climate Change

    マンダレー市副市長以下がJICA低炭素都市計画策定能力強化研修に参加(北九州市;2014年9月)

北九州市は、都市間協力や姉妹都市協力(北九州市はインドネシア・スラバヤ市の「環境姉妹都市」、ベトナム・ハイフォン市の「姉妹都市」)を通じて、アジア及びASEANの都市においてグリーンで低炭素な発展を実現するという明確な目標を掲げています。同市がこれまで国際会議開催等を通じて築いてきた都市間ネットワークは現在、「アジア環境都市機構」として再編されており、IGES北九州アーバンセンターは同ネットワークを維持・拡大することが期待されています。この中には環境技術・知識の移転も含まれており、IGESは政策研究機関として北九州市を支援するとともに、ASEAN諸都市とのネットワーク形成や能力開発に取り組んでいます。直近の事例としては、ミャンマー第二の都市、マンダレー市と北九州市との間の廃棄物管理に関する技術協力の支援があります。

---最後に、モデル都市プログラムやハイレベルセミナーなどを活用した都市間ネットワーク事業の課題や今後の展開について教えてください。

  • カンボジアの若者たちとの広報活動 カンボジアの若者たちとの広報活動 (2014年10月)

ティオ:

それぞれの都市の成功例や政策を広げていくために、ステークホルダー同士を効果的に結びつけることが大きな課題です。「個別の優良事例」は既にありますが、どうすればそれを「大きな変化」につなげられるかということです。

国際開発において「持続可能な都市」がホットな話題となる中、ASEAN諸国の地方自治体は、国際協力や都市間交流を通じて都市問題を軽減していくことに関心を持っています。しかし、地方自治体の多くは、そうした機会や経験、実践的な能力等(例:英語力、提案の作成など)を十分備えていません。その上、都市開発には統合的で分野横断的なアプローチが不可欠ですが、産業部門や担当省庁別に取り組みや施策が分断されていることがよくあります。

将来的には、ASEAN諸国のESC枠組みやイニシアティブを支援することで、モデル都市プログラムとハイレベルセミナーがESCの構築に実質的な貢献を果たすよう願っています。有望で熱意のある都市を支援するには、各国がしっかりとした都市の仕組みを構築していることが肝要です。IGESは、ASEAN諸国の政府・地方自治体と信頼関係を維持し、それぞれのニーズと優先課題を理解することで、都市から中央政府、さらに国際的なステークホルダー(北九州市、ドナー機関、開発機関、専門家等)まで、多様な活動を促進する「架け橋」として今後も活動していきます。



---ありがとうございました。



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