Climate Updates

パリ協定を実施するのは誰か? 次の主役は“non-state actors”

2016年11月22日

11月8日現地時間15時、マラケシュの会場で行われたCOP22公式サイドイベント「non-state actorsの役割-短期の目標を高め、パリ協定の実施を進めるために-」(主催:WWF、AVINA財団、CAN気候変動ネットワーク)(*1)では、COP20、COP21、COP22の立役者であるエマニュエル・プルガービダル氏(元ペルー大臣COP20議長、現WWFインターナショナル気候リーダー)、ロランス・トゥビアナ氏(フランスCOP21特別代表、ISAP2016で基調講演)、ハキマ・エル・ハイテ氏(モロッコ環境大臣)がそろい踏みとなり、先進的な取り組みを行っている自治体、企業、NGOらとパネルディスカッションを展開した。パリ協定締結においてnon-state actorsが果たした役割が大きかったこと、2℃目標さらには1.5℃目標の実現に向けたnon-state actorsへの期待、具体的な事例の共有がなされるごとに「これからはnon-state actorsが主役!」という熱気が満員の聴衆を包むようだった。

もちろん、COPにおける交渉の主役は政府代表団である。COP21においてパリ協定という大目標がすべての締約国で共有された今、COP22では実施にあたってのルール作りについて政府代表団による具体的な議論が行われている。今後、各国家主体(state actors)は、そのルールに則りながら、実行計画の策定、予算措置、政府率先行動等を行うが、パリ協定が目指す大幅な温室効果ガス排出量削減を実現するためには、企業や自治体、NGO、さらには市民などの非国家主体(non-state actors)による行動が重要になる。2009年にコペンハーゲンで行われたCOP15が頓挫した原因として、各国の首脳が決めれば皆ついてくるだろう、といった議論の進め方に問題があったと思う。その教訓を活かしてCOP20ではリマパリ行動アジェンダが合意され、非国家主体の気候変動の緩和と適応に向けた行動の拡大が図られ、COP21には数多くの自治体の首長とビジネスリーダーが集まり、自らの率先行動を宣言した。COP22では”Global Climate Action Agenda”(*2)と銘打ちより多くの非国家主体の行動を促すとともに、”High Level Champions”セッションを設けて自治体やビジネスのリーダーとCOPの場で直接対話し行動を加速する装置を備えた。

翌日の11月9日、同じ会場でサイドイベント「アジア低炭素社会実現を促進するために:温暖化対策計画づくりと市場メカニズム整備の実践」(主催:国立環境研究所、マレーシア工科大学、海外環境協力センター、日本国環境省)(*3)を行った。日本とマレーシア、ベトナム、アジアの国々の政府や自治体、研究者、関係機関等が協力することで現場の行動に結びつけている事例を報告した。具体的にはクアラルンプール市、ハイフォン市、ダナン市において気候変動実行計画を検討している様子、イスカンダル・マレーシア開発地域では建物や街区、市域の環境性能評価を可能にするCASBEEの習得を進めている様子を共有した。ちょうどアメリカ大統領選挙の結果がわかった直後のサイドイベントだったこともあり、米国国籍の聴衆の方から「アジアの都市における具体的な取り組みを聞くことができて、とても勇気づけられた」との言葉を頂いた。

今後、パリ協定実施に向けたルールづくりが進んでいくが、肝心なことは温室効果ガス排出量削減を進め、避けられない気候変動影響への適応に取り組むプレーヤーを増やし、活動を深化していけるような環境を整え、適切な支援をしていくことである。まさにChange Agentsを標榜するIGESの役割であり、多様な主体との協力によりnon-state actorsが主役となる時代を下支えしたい。

11月8日 WWFら主催のCOP22公式サイドイベントの様子
左からCAN事務局長、フランスCOP21特別代表のトゥビアナ氏、モロッコCOP22環境大臣ハイテ氏、ペルーCOP20議長プルガービダル氏
11月9日 国立環境研究所ら主催のCOP22公式サイドイベント
ベトナム・ハイフォン市、ダナン市の温暖化対策シナリオを公表する参加者、中央は筆者
11月10日 日本パビリオンのサイドイベント
低炭素型東京オリンピック・パラリンピックに向けたユースの役割を世界のユースが議論

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