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エネルギーミックスの選択肢に関する経済影響評価
~原子力の段階的な依存度低減シナリオ、2050年CO2 80%減は可能~
2012年6月4日

主要メッセージ

  • 原子力への依存を段階的に低減させながらCO2排出の長期的大幅削減(2050年に1990年比-80%)を図ることは可能。
  • 原子力への依存を段階的に低減させるシナリオを原子力に依存し続けるシナリオと比べた場合、年間のコスト増加は長期的には平均でGDPの0.13%程度と限定的。
  • 原子力を使わずにCO2排出を大幅削減するには、再エネ、CO2回収・貯留(CCS)技術を最大限活用する必要があり、これら技術・産業を早急に開発・育成することが重要。
  • 2030年頃までは天然ガス需要が大幅増加(最大約50%)するため、新たな天然ガス調達先の確保が重要。
  • 原子力依存からの脱却と低炭素社会を同時に実現するには、ライフスタイルと経済構造の変化を通じた一層のエネルギー消費抑制が重要。

1. 背景と目的
日本は現在、エネルギー・環境戦略の全面的見直しを迫られている。本研究では、CO2排出量を2050年までに1990年比で80%削減する場合、福島原発事故以前のエネルギー基本計画のように、原子力を将来にわたり増やしていくシナリオと、原子力への依存を2050年までに段階的に低減させるシナリオとでエネルギーシステムの姿にどのような差が出るのかを比較した。 これまでのエネルギー供給面における議論は、主に短期的な発電コストの変化に集中しており、長期的なコストの変化等についてはなされていない。また、政府が国内外で表明している2050年における温室効果ガス排出量の1990年比80%削減を踏まえた分析もいまだに少ない。
2. 分析・比較したシナリオ
本研究では以下の2つのシナリオを想定した。両シナリオにおける2050年までのCO2排出量については、1990年の水準(11.4億トン)に対して2020年に17%減、2030年に 40%減、そして2050年に80%減と想定した。
  1. 2010年エネルギー基本計画に準拠した福島原発事故以前のエネルギー政策を維持しつつ、2050年におけるCO2排出を1990年比80%削減するシナリオ。
  2. 段階的原子力依存低減(NPO-LC)シナリオ
3. 結果と考察
  • 電源構成
    2つのシナリオにおいてコストが最小となる2030年および2050年の電源構成を図1に示す。原子力への依存を段階的に低減させる場合、2050年には火力発電のほとんどでCO2回収・貯留(CCS)を行う必要があることが示唆された。
    また2030年頃までは天然ガス火力が大幅に増える(最大約50%)。この結果は、新たな天然ガス調達先の確保の重要性を示唆している。

    図1: 2030年および2050年における電源構成
    図1: 2030年および2050年における電源構成


  • CO2排出量
    REF-LCおよびNPO-LC両シナリオにおけるCO2排出量の内訳を図2に示す。2つのシナリオの全体的な傾向は似ているが、大きく異なるのはCCSによるCO2の貯留量である。NPO-LCシナリオについてはREF-LCシナリオより年間1億7000万トン多い、年間約3億5000万トンの貯留が必要であると算出された。

    しかし、CCSなど特定の低炭素技術に大きく依存するのは好ましくない。原子力を使用せずに2050年におけるCO2排出の1990年比80%削減を目指すには、エネルギー供給側の低炭素化を推進するとともに、ライフスタイルおよび経済構造の変化を促すようなエネルギー需要抑制策が一層重要になってくる。

図2: 2050年におけるCO2排出量の内訳(2005年排出のモデル推計も参考として表示)

  • 図2: 2050年におけるCO2排出量の内訳(2005年排出のモデル推計も参考として表示)


  • エネルギー輸入とエネルギーシステムコスト
    2010-2050年におけるエネルギーシステム総コスト(化石燃料輸入、投資費、固定費、その他変動費の総和の正味現在価値)は、原子力への依存を段階的に低減させるNPO-LCシナリオの方が、REF-LCシナリオに比べ1%程度高くなることが示唆された。また、年間のエネルギーシステム総コストの増加は、平均でGDPの約0.13%程度である。このコスト増加の大半を、天然ガスをはじめとする化石燃料の輸入費が占める。

詳細資料PDF 1MB

【本プレスリリースに係る問合わせ先】
IGES気候変動グループ・特任研究員:倉持 壮 (Takeshi Kuramochi)

IGES経済と環境グループ・主任研究員:アニンディヤ・バタチャリヤ(Anindya Bhattacharya)

IGES気候変動グループ・研究員:
ナンダクマール・ジャナルダナン(Nanda Kumar Janardhanan)
Email: cc-info@iges.or.jp

IGES 広報担当:土井 恵美子
Email: doi@iges.or.jp
Tel: 046-855-3720

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