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■2013年以降の気候変動枠組みに係る非公式対話
「コペンハーゲン合意に向けて―課題と展望」 を京都で開催
2008年10月20日

財団法人地球環境戦略研究機関(IGES、神奈川県葉山町 理事長 浜中裕徳)は、アジアにおける2013年以降の気候変動枠組みに係る非公式対話「コペンハーゲン合意に向けて―課題と展望」を、2008年10月9日~10日に京都で国立環境研究所(NIES)及び国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)と共催しました。

本対話には、アジア諸国(インド、インドネシア、バングラデッシュ、韓国、シンガポール、タイ、中国、日本、フィリピン、ベトナム等)の政策担当者、産業界、有識者をはじめ、先進国(オーストラリア、カナダ、デンマーク、ニュージーランド、米国等)や経済協力開発機構(OECD)等の国際機関から約80名が参加しました。

この非公式対話はIGESが2005年度から実施しているもので
*1、京都議定書後の気候変動に係る国際枠組みについてのアジアにおける議論を深め、将来枠組みの形成にアジアの視点を反映させようという取り組みです。

今回の対話では、バリ行動計画において論議を呼ぶと思われる8つの事項(セクター別アプローチ、コベネフィット、適応、REDDなど)に焦点を当て、現状の課題と可能な選択肢について、活発かつ率直な意見交換を行いました。特に、セクター別アプローチにおけるインセンティブのあり方や、コベネフィットの取り組みに対する支援手法、発展途上国における国内の適切な削減行動、気候変動に係るコミットメントや活動の計測、報告、認証の定義付けについて、活発な議論を行いました。

今回の対話の成果は、2008年12月にポーランド・ボズナンで開催される国連気候変動枠組条約第14回締約国会議及び京都議定書第4回締約国会合(COP14/COP MOP4)のサイドイベントにおいて発表する予定です。


*1 この非公式対話は、(1)アジア太平洋における将来の気候変動対策についての革新的かつ建設的な考えを促進すること、(2)同地域の国々の懸念と開発に対する期待を十分反映した枠組みの構築に貢献すること、を目指しています。

これまでの対話の成果は、報告書「Asian Perspectives on Climate Regime Beyond 2012: Concerns, Interests and Priorities(アジアから見た将来気候政策枠組み:懸念、関心、優先事項)」(2005年年度)、報告書「Asian Aspirations for Climate Regime Beyond 2012(気候変動に関する将来枠組みへのアジアの期待)」(2006年度)、報告書「The Climate Regime Beyond 2012: Reconciling Asian Developmental Priorities and Global Climate Interests(2013年以降の気候変動枠組み:アジアの優先事項と地球規模の利益の調和)」(2007年度)としてまとめられました。

対話の概要につきましては、こちらをご参照ください。

【本件に関する問合せ先】
(財)地球環境戦略研究機関(IGES)
気候政策プロジェクト サブマネージャー 田村堅太郎

IGES 広報担当:城戸めぐみ
Email: iges@iges.or.jp
〒240-0115 神奈川県三浦郡葉山町上山口2108-11
Tel: 046-855-3734 / Fax: 046-855-3709



資料

2013年以降の気候変動枠組みに係る非公式対話
「コペンハーゲン合意に向けて―課題と展望」概要


1. 開催概要

日程: 2008年10月9日(木)- 10日(金)
会場: エルイン京都 (京都市南区)
主催: 財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)
国立環境研究所(NIES)
国連アジア太平洋経済社会委員会(UNESCAP)

2. 対話の概要

セッション 1: イントロダクション
浜中裕徳IGES理事長による開会挨拶があり、その中で、経済発展は貧困から脱却するためには不可欠であるが、同時にエネルギー消費と温室効果ガス排出を増加させる要因であることを指摘し、4年目となる今回のIGES非公式対話の目的は、2013年以降の気候変動枠組みの合意が、どのように発展途上国の発展を助けるのかと同時に、気候変動に立ち向かうことができるのかを検討することにあると述べた。
続いて、市村雅一UNESCAP環境持続可能開発部環境課長が、UNESCAPを代表して参加者を歓迎した。同氏は、UNESCAPがアジア太平洋地域の発展途上国に対し、将来気候枠組みを構築するための支援に一層力を注いでいることを述べた。また、UNESCAPは交渉の立場にはないものの、2013年以降の枠組みにおける様々な意見に対し、衡平かつ客観的な分析を提供できると述べ、今回の京都会議が、意義深い地域及び地域間フォーラムの一つとなるであろうことを指摘した。
続く基調講演の中で、西村六善元外務省特命全権大使(地球環境問題担当)は、気候政策の交渉担当が直面している良いニュースと悪いニュースを取り上げた。同氏は、良いニュースとして、発展途上国が果たす役割の拡大、間近に迫った米国トップの交代、地球全体での世論の圧力の増大を挙げた。悪いニュースとして、最近の金融危機と、先進国と途上国の間の埋まらない溝について指摘した。また、交渉を前進させるためには、コペンハーゲンでの合意が、効果的のみならず現実的かつ実用的でシンプルなものでなくてはならないと述べた。
スリニバサン・アンチャIGES気候政策プロジェクトマネージャーは、これまでのIGES政策対話の結果を要約したのち、2013年以降の気候変動枠組みに関する提案の大半が、アジアの発展に関する懸念について十分な関心を払ってこなかったことを指摘し、それらの懸念を無視することはコペンハーゲンでの合意の達成を難しくする可能性があると述べた。最後に、本会議を構成する7つのセッションにおいてテーマとなる一連の質問を参加者に紹介した。


セッション 2: セクター別アプローチ
セクター別アプローチに確固たる定義がないことは、合意達成を難しくする一方で、さまざまな懸念や関心を反映させうる柔軟性をもたらす。制度設計における小さな違いが、環境面及び経済面において大きな影響を持つこと、また、セクター別アプローチは目的達成のための手段であり、それ自体が目的ではないとの議論があった。
セクター別アプローチを共通だが差異のある責任の原則に合致させるために、国別に調整された基準や目標を設定すべきとの意見があった。また、国家間の技術ストックの著しい違いを考慮すると、単一の基準や効率目標は不適切であることも指摘され、特定のタイプや同世代の技術に的を絞ることも提案された。
先進国及び途上国の双方がセクター毎の行動をとるためのインセンティブが重要であるとの理解が共有された。しかし、インセンティブのあり方、特にセクターレベルのクレジティング・メカニズムに関して、絶対排出量目標や集約度目標について異なる見解が示され、それぞれのオプションの長所と短所が議論された。(例:絶対排出量目標における「ホットエア」の可能性や、集約度目標に基づくクレジットと絶対排出量キャップに基づく遵守ユニットとの間の互換性への懸念等)
国際的な競争にさらされている先進国の企業がセクター別アプローチに参加するための原動力として、先進国の国別排出量削減目標を定めることの重要性が指摘された。これらの企業は国際的な競争をする上で、「同じ土俵」を求めるからである。また、セクター別アプローチの環境十全性を保証するためには、官民パートナーシップなどの政府の関与が重要であるとの指摘もあった。
発展途上国においてセクター別アプローチを実施する際の技術的な実現可能性に関する質問が出された。それに対し、IPCCガイドラインが排出量計測の方法論を提供しているが、途上国毎に異なるデータの入手可能性の問題が障害となるとの指摘があった。


セッション 3: コベネフィット
コベネフィットをもたらす取り組みに対して、現行の気候枠組みは十分に支援していないという点で認識が一致した。例えば、インドからの参加者は、インドの国家気候変動行動計画が気候問題と開発ニーズとを統合したものの、その進展を承認・評価する国際的なメカニズムがないことを指摘した。
参加者の大多数は、途上国におけるコベネフィット対策を先進国が支援するための具体的なインセンティブについて明確に示すことができなかった。しかし、CDMプロジェクトに対するゴールド・スタンダードの対象範囲をエネルギー分野のプロジェクトから他分野へ広げることが「間接的」なインセンティブを生み出すとした参加者もあった。その一方で、参加者からは、途上国でのコベネフィット対策に取り組むインセンティブを受け取るよりも、先進国は途上国がコベネフィットを実現する上での障壁を除去する必要があるとの意見が出された。例えば、中国からの参加者は、知的所有権(IPR)の過剰な保護が、地球温暖化と大気汚染の双方の防止に役立つ技術の移転を妨げていると指摘した。
CDMを通じたコベネフィットへの支援メカニズムが、コベネフィットの定量化手法に基づくべきか、もしくは追加性等より緩やかな基準に基づいて行われるべきかについて、意見の相違が見られた。参加者からは、途上国にコベネフィットの定量化を求めることは、ホスト国の指定国家機関(DNA)に事務的負担をもたらすとの懸念があがった。一方で、コベネフィットを評価する厳格な手法や方法論なしにプロジェクトのコベネフィットを精査することは困難であるとの指摘もあった。
コベネフィットをもたらすCDMプロジェクトの競争力を高める方策について、いくつかのアプローチが提唱された。日本の参加者は、CDMプロジェクトに関するポジティブリストを作成し、そこに掲載されている案件は、CDM理事会から迅速かつ簡単な手続きを受けるべきであると提案した。カンボジアからの参加者は、コベネフィットをもたらすプロジェクトは二倍のクレジットを受け取る、またはクレジットを「ゴールド」とすることで通常のCERとの差別化を図る必要があると指摘した。
多くの参加者は、コベネフィットをもたらす取り組みは、非市場メカニズムではなく、改革されたCDMによって支援されるべきであると表明した。しかしながら、CDMへの過大な期待に対する懸念が表明され、CDMの主たる役割は附属書I国に対して費用効果の高い排出削減機会を提供するものであるべきとの指摘もあった。また、CDMのセクターレベルや政策レベルへの拡大に伴う安価なクレジットによる市場の混乱を避けるために、附属書I国による大幅な削減目標の設定が必要となるとの主張があった。
コベネフィットの承認に要する実施コストを削減する必要性が、一貫したテーマとして議論された。参加者からは、UNFCCCの活動とコベネフィットの定量化に関する研究との間でのより活発な協力が、実施コストの削減につながるとの指摘があった。例えば、研究者はコベネフィット定量化の評価技法や分析手法をUNFCCCに提供し、UNFCCCは将来枠組みにおいてそのインプットを使い、コベネフィット促進のための優遇措置をとる際の閾値(米ドル/炭素トン)を設定することもできる。


セッション 4: 途上国における取り組みを促進するための環境作り

民間投資が技術移転を牽引する大きな力であることから、参加者からは、気候対策技術への民間投資及び財政的支援を促すために有利な市場形成を政府に求める声が上がった。しかしながら、「効果的な政策ツール」の内容は国によって異なる。例えば、インドでは、2003年の電気法による再生可能エネルギーの購買義務と特恵関税が、再生可能エネルギー、特に風力と水力への民間投資の激増をもたらしたとの指摘があった。
「気候に優しい技術」における知的所有権(IPR)が技術移転に対する潜在的障壁であるかどうかの議論について、さらなる検討が必要である。特定の技術システムにおいてどのような特許技術が用いられているかを明らかにするプロセスを通じ、IPRが技術移転の障害となっているかについて実証されなくてはならない。一方で、主要な気候対策技術の取得を促すための技術資金メカニズム創設の主張も見られた。
貿易政策が気候対策技術の普及を促すのかについてより詳細な検証が必要であるとの議論があった。多くの発展途上国、例えば、風力エネルギーに関するインドや中国、蛍光灯ランプについての中国やインドなどは、気候に優しい技術の生産国となりつつある。政府は、多国間または二国間の貿易交渉についての理解をより深め、それらが重要な気候対策製品や技術に与える影響を把握することが求められる。
技術移転のパフォーマンス指標の役割について、技術移転がプロセスであることを理解し、必要とされる技術が途上国にどの程度移転されたかを理解することに対して、より注意が払われるべきだとの議論があった。技術移転に関する専門家グループ(EGTT)が技術移転の実態を効果的にモニターするための適切な指標を開発・検証することに対して、各国政府は協力するべきである。
発展途上国からの参加者の多くは、各国の緩和と適応ニーズに適切に対応するためには、新規もしくは追加的な資金源が必要であると主張した。基金の名前のすげ替えは途上国の不信を招くだけであり、避けるべきである。一方、先進国からの参加者は、資金の提供側と受手側の双方が、現行の基金の有効性に関してより強い説明責任を負うべきであるとした。
将来枠組みにおいて資金の拡大を促すために、参加者は次のような提案を行った。資金提供国の自主的コミットメントから新しいバーデン・シェアリング制度への移行、市場メカニズムのさらなる活用(例、共同実施(JI)や国際排出量取引に対する2%の課徴金の適用)、排出量クレジットのオークション、炭素集約型活動に対する国際的な課税(例、国際航空適応税(IATAL))、排出削減量に対する先払い契約によるプロジェクト融資への追加的な財源、などである。その一方で、一部の参加者からは、資金を拡大することは難しく、「援助効果向上に関するパリ宣言」に沿って、現在ある二国間あるいは多国間の支援方式の効率性向上に注力すべきであるという指摘も出された。
一部の参加者からは、民間投資と公的投資の特性には違いがあり、その役割も異なるとの指摘があった。民間投資はより大きな潜在性を持つがリスクをとりたがらないため、投資を呼び込むために環境を整えインセンティブを図ることが必須である。そのためには、明確な中長期のGHG削減目標の設定や官民パートナーシップ(PPP)の強化、カーボン・ファイナンス・プロジェクトのリスク補償や手続きの効率化などが必要となる。
100を超える炭素基金の存在は、基金の細分化を招くとともに全体としての投資効果を削ぐものであるということで参加者は共通の理解を得た。また、融資家、投資家などのステークホルダー(関係者)の間での調整が強く勧められた。


セッション 5: 適応
適応のコストは莫大かつ増加しつつあるため、将来気候枠組みは、公的資金と民間資金の両者を促進するべきである。適応を開発政策に反映し、双方がウィン-ウィンとなるための方策を特定することは、適応コストの削減につながるとして、さまざまな側面から注力することが求められた。
将来枠組みにおける適応資金メカニズムは、追加的で安定した資金供給であるべきとの議論があった。そうした資金メカニズムの運営は、理想的には京都議定書の下での適応資金理事会の例に倣うべきとの指摘もあった。なぜなら、同理事会は途上国からのメンバーが多数を占めることで、より途上国側の強い所有意識(ownership)と政策決定への影響力につながっているからである。また、国際金融機関は重要な役割を担うが、政策決定を左右したり、基金の細分化につながるべきではないとの議論もあった。
発展途上国の差異化の可能性が論じられ、将来の適応枠組みに効果的に適用されるとの議論があった。一部の参加者は差異化についての議論はまだ継続しており、さらなるインプットが必要であると主張した。多くの参加者は、理想的には、途上国がそれぞれの脆弱性に基づいて差異化できると考え、この点について、脆弱性指標や適応指標の開発が貢献できるとした。
先進国が途上国における適応に投資するインセンティブのうち最も重要なものは、途上国からの継続的な財・サービスの提供を確保することにあるとの指摘があった。多くの参加者は、発展途上国にとってのインセンティブは、適応のための効果的な制度や適応政策を立案する能力を構築するための追加的な資金や技術であると指摘した。適応がもたらすコベネフィットもまた効果的なインセンティブとなりうる。
発展途上国におけるリスク補償は、リスク緩和メカニズム(リスクの高い地域におけるより厳しい建築物の構造基準や土地利用規制への災害リスクの反映など)が不十分であるために、高いコストがかかる。したがって、将来気候枠組みは、高いリスク補償コストを軽減するためのリスク移転メカニズムを組み込むべきであるとの指摘があった。公的資金と民間資金の両者が、リスク移転メカニズムに含まれるべきである。世界単一ではなく、各国の状況に対応したリスク移転メカニズムを構築すべきである。


セッション 6: 森林減少と森林劣化に由来する排出削減(REDD)

参加者の多くは、森林伐採及び森林劣化の回避による温暖化ガス排出の削減を主張したが、一部の参加者からは、長期的な環境保全(生物多様性、水源涵養サービス)及び持続可能な森林管理を含めた包括的なアプローチによる解決策を求める意見も見られた。
REDDに係るインセンティブ・システムには二国間及び多国間援助が不可欠であることで意見が一致したが、REDDがもたらす効果を確保するためには、市場メカニズムや民間セクターの関与も更に必要であるとする意見も見られた。
REDDについて、国、地方及びプロジェクトレベルでの複合的な対策の実施が広く支持された。特に、分権化された森林管理制度にはプロジェクトレベルでの対策が、他方、炭素隔離の算定及び報告制度には国レベルでの対策がそれぞれ重要であるとした。
植林・再植林(A/R)CDMの阻害要因である炭素リーケージの問題や複雑な枠組み(モダリティ)、ルール及びプロセスの存在を鑑みると、REDDはCDM制度に取り込むべきでないとする意見で一致した。代替案として、バリ行動計画及び京都議定書に基づいた、より柔軟なメカニズムをREDDへ応用する案が出された。
途上国における能力開発のニーズに対応した援助の機会があることについて、複数の参加者から言及があった。能力開発の実施はUNFCCC下では困難であると考えられるが、多国間、二国間及び民間部門によるイニシアティブに基づく資金の確保が可能であるとした。


セッション 7: インベントリ
非附属書I国による定期的なインベントリの実施に係る阻害要因として、高精度なデータの不足、活動データの不確実性、有能なインベントリチームの欠如、初期コストの高さ等が挙げられた。これらの問題の解決策として、財政資金の確保、神戸イニチシアティブに基づく能力開発の実施、政策立案者やステークホルダーを対象としたインベントリの価値に対する理解促進、インセンティブと罰則の明文化、国毎の排出係数の開発促進等が提案された。
インベントリは他の政策目的にも応用が可能であることが確認された。例えば、インベントリに基づくデータは、CDMプロジェクトのベースライン算定、適切なエネルギー保障政策の策定、コベネフィットの定量化、また税や貿易制度等を考慮する際にも応用が可能である。
非附属書I国と附属書I国の間には、インベントリに係るデータの質及び精度に差があるため、域内における自発的な相互外部審査の実施が提案された。
一部の参加者からは、インベントリに係る既存の障壁を取り除くには、グッドプラクティスや教訓等の情報を共有する制度の開発や、1996年版IPCCガイドライン及び2006年版ガイドラインの違いを学習するワークショップの開催等の必要性について言及があった。類似した排出形態を持つ非附属書I国をグループ化すべきとする提案については、議長は政治的な観点から排出国のグループ化は建設的ではないとする見解を示した。
一部の参加者からは、総排出量が微量である国の存在を考慮すると、将来枠組みにおいて全ての加盟国が全対象ガスについて報告する必要性はないとする意見が出された。一方、議長は排出量が微量である国々は往々にして気候変動がもたらす影響に脆弱であることから、これらの国々を報告義務から除くことは、国際連携という観点から政治的に好ましいとは言えないのではないかと述べた。
加盟国の多くがインベントリの価値を評価し、多様な使途を見出していることにより、インベントリの準備プロセスは大きく改善した。先進国においてもインベントリに係る国際協力の重要性を認識しつつある。本セッションでは、専門家諮問グループ(CGE)が事実上活動を停止している状況に触れ、条約交渉官に速やかな議論の進展を促した。


セッション8: バリ行動計画:進むべき道

現在までにバリ行動計画(BAP)は様々な形でその強みや改善点について議論されている。一部の参加者は、BAPの強みとして、「適応」や「REDD」等、今まで議論の隅に追いやられていた議題を交渉の前面へ持ち出したことを挙げた。また、多岐に渡る分野を網羅し、全加盟国を対象としたBAPへの合意は、気候変動交渉に大きな前進をもたらしたとするコメントも出された。BAPの改善点としては、未だ多くの未解決課題が残されていること、BAPが多岐に渡る交渉トラックの一部に過ぎないこと、そして重要な課題が包括的に取り扱われていないことや、共有されたビジョン及び明確な交渉の終着点が提示されていないことなどが挙げられた。
参加者の多くが発展途上国の国内の適切な緩和行動(NAMA)を定義付けることに難色を示す中、ある参加者は、NAMAとは、現在の政策を継続した場合(BAU)と比較して、排出量削減を達成した政策あるいは活動であると述べた。この定義には、NAMAには不適格な活動のネガティブリスト(原子力発電、炭素隔離・貯蔵)を補足する必要があるかもしれない。また、NAMAは、BAUとの分岐に釣り合う形で、技術、資金、能力開発等の側面から支援されるべきである。
参加者の多くは、気候変動に係るコミットメントや活動の計測、報告、認証(MRV)の定義付けについて難色を示した。この点について、緩和の目的で調達した資金の総額が指標として機能するのではないかとしたインドネシアからの参加者の発言は注目に値する。また、エネルギー効率に係る施策も指標となりうるとした発言も見られた。参加者の多くは、MRVを途上国に適用する行為は、キャパシティの制約から難しいとの認識を示した。
既に京都プロセスに関与している国々にとって、先進国による取り組みの比較は容易である。比較モデルの一例としては、EUのバーデン・シェアリングメカニズムが挙げられる。但し、米国など、京都議定書未批准国にこれら同様のモデルを適用することは現実的には困難である。
参加者からは、途上国におけるGHG排出量と経済成長のディカプリングを支援するための先進国側による明確な政治的コミットメントが打ち出される必要があり、これにより気候変動枠組みは開発の課題をより取り込んだものになるとの認識が示された。こうした取り組みには、将来枠組みのルールを途上国のニーズにすり合わせる必要があるとの意見が出された。他の参加者は、先進国が排出量削減により真剣に取り組むべきであると述べた。GHG排出量の大幅削減の同意には、先進国による真摯な取組みとCER需要の増加が肝要である。
参加者は、先進国と途上国の間に存在するBAPの解釈の差を埋めるための優先事項を数点確認した。参加者の多くは、適応への関心を共有することの重要性を指摘した。韓国からの参加者は、同国はOECD加盟国であるが、既に気候変動の被害を受けているという状況を説明した。
民生部門やサービス部門によるGHG排出量削減には、更なる協力の余地があるとする意見が出された。インドからの参加者は、先進国と途上国におけるGHG排出量の増加はライフスタイルの変化によるものであるとした。需要サイドの効率改善に資する革新的な技術開発及び制度の整備が共有されるべき優先事項である。
途上国におけるGHG排出削減努力とその成果を国際社会が広く認識することにより、BAP解釈の差が埋まるとの見解が示された。一部の参加者からは、中国はとりわけ大胆であり、緩和策としてエネルギー効率を大幅に向上させる目標を立てているが、これらの努力に対して一定の評価・認識が伴っていないとの意見が出された。
2013年以降の気候枠組みの交渉において繰り返し議論されるテーマとして、簡素化と複雑化の間のバランスの確保が挙げられる。この問題を解決するためには、まず交渉の大枠で合意し、その上で実施上の詳細について交渉を開始するという二段構えのアプローチが必要であるとの意見が出された。その他の参加者は、このような合意を経た後、過去の気候変動交渉の過程を確認することが重要であると示唆した。

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